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最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)742号 判決 1965年4月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人八島喜久夫、同中村喜一の上告理由第一点、第二点について。

論旨は、原判決が、本件事故の発生につき上告人の道路の管理に瑕疵があつたとして、上告人に国家賠償法二条に基づく賠償責任を認めたのは、右法条の解釈を誤つた違法がある、というのである。

しかし、原判決の確定した事実関係のもとにおいて、上告人において原判示の道路の管理に瑕疵があり、本件事故の発生につき上告人に国家賠償法二条に基づく賠償責任があるとした原審の判断は正当である。右法条は地方公共団体の道路の管理に無過失責任を認めたものである旨の原判示部分は傍論にすぎないから、この点を非難する所論は採用できない。また、地方公共団体が予算の範囲内で道路の管理をすれば道路に瑕疵があつても前記法条にいう道路の管理の瑕疵があるとはいえないとの所論は、採用できない。論旨はいずれも理由がない。

上告理由第三点について。

論旨は、本件事故の原因は梶原次郎が仙台市内におけるオートバイの制限時速四〇キロメートルをこえる速度で疾走したことに起因するものであるとの上告人の主張を認めないで、道路管理者である上告人の責任を認めた原判決は、因果関係に関する法則と公平の原則に反するものである、というのである。

しかし、原判示の事実関係のもとにおいて、本件事故の発生は上告人の本件道路の管理に瑕疵があつたことによるほか、梶原次郎が酒気を帯び高速度で原動機付自転車を操縦したことにも原因がある旨判断して、過失相殺を適用したうえ上告人の原判示の損害賠償責任を認めた原判決は正当であつて、その判断の過程において所論の違法はない。所論は、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外)

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